新聞奨学生として、仕事と勉学を両立し、無事卒業していく人は半分もいません。
そこには厳しい現実が待ち受けているからです。
第一に、新聞配達業務という特殊性です。
朝刊は、朝の3時位から6時過ぎくらいまで掛かるのが一般的です。
夕刊も、夕方の15時過ぎに始まり17時くらいまでかかります。
その後翌朝の折り込み広告をまとめる作業が入ります。
月末月初は集金業務。
夜の19時から21時くらいが狙い目。
ただ、平日はなかなか会えないお客さんもいます。
休日の午前中や午後、どうしても会えないお客さんには、深夜にまで訪問することもしばしばです。
そうなると、新聞奨学生にとっては、まず仕事が第一になってきます。
一番怖いのは、なかなかその習慣に馴染めず、本業である勉学が疎かになってしまうことです。
卒業を待たずに辞めていく理由の大半はここにあります。
仕事第一、学業は二の次。要は学校に行かなくなるということです。
でも学費は立て替えてもらっているので、学校には行かなくても一年間は働かなければならない。
人生設計はそこで狂う事になります。
2点目に、販売所での人間関係です。
奨学生は大概が高校を卒業したての若者。
色んな価値観や人生観を持った人たちが全国から集まります。
さらに、販売所には専業さんと呼ばれる正社員の方達も多数いらっしゃいます
そこで今までに経験したことのないような人間関係が構築されていきます。
お互いを高め合う良き仲間ばかりであれば最高ですが、大概の場合、良い仲間もいれば、自分を悪の道に誘う人たちも少なからずいます。
自分の人生にプラスにならないようなことをその人達から植え付けられ、人生を狂わす人も少なからずいました。
パチンコや競馬などのギャンブルは当たり前の世界。自分も一時期それにハマってしまった時期がありました。
その中で、仲間同士の金銭の貸し借りが発生すると、最悪のパターンにはまります。
ドロ沼の人間関係。
罵り合いや殴り合いが頻発します。
集金の持ち逃げなんかも一度や二度の話ではありません。
こんなことはなかなかできない経験で貴重なのかもしれないけれど、できることなら安心した環境で過ごしたい。
そういって販売所を去っていく人たちも少なからずいました。
結局、なかなか続かない理由というのは、新しい学生生活に馴染めないということです。
新聞奨学生の生活が厳しい、というふうに見えてしまう。
だから耐えられなくなり、去っていくのです。
確かに、新聞奨学生を続けながら卒業するには強い意志が必要です。
なんとしても卒業してやる、という信念。
そこがあるかないか。
それが大事なことです。
私はなんとか無事卒業できました。
なんとしても卒業する、という強い信念だけがありました。
逆に言えば、卒業できた理由はそれだけだったということかもしれません。
でも、今振り返ると、大学生活は後悔ばかりが先に立ちます。
もっとできたな、もっとやれたな、ああしておけば良かった、こうしていれば良かった。
それは今でも自分の夢に出てきたりします。
【後編】に続く。